花ごころ

時を知る
 


基本的にせっかちな性格のわたしは
何でも「思いついたが吉日」とばかり
すぐ行動に移すことが多い

ところが
生き物を相手にする場合
今がどういう時であるかをまず知らずして行動すると
結局は回り道をしたり
あるいは失敗に至るのだということが
最近よくやくわかるようになってきた

2年前から作りはじめた米ぬか発酵肥料を
この1月からまた新たに戸外で作っているが
さすがの微生物も活動を停止しているだろうと思われるこの寒さの中でも
こうじ菌がゆっくりゆっくり働いている現実に遭遇し
非常に驚いてしまった

どうせ発酵は進んでいないだろう
そう思って時折ふたを開けると
わずかに甘い香りがする
でも発熱はしていない
しばらく放っておいてまたあけると
やはり甘酒のような香りがしている
でもまだ発熱していない

わたしは今まで
発酵=発熱という図式が頭の中でできており
いくらそれらしい香りがしていても
どうしてもこれが順調な発酵とは思えなかった

ところが
それから2週間も経った頃
(作り始めて一ヶ月後)
ふたをあけると表面は真っ白になっており
甘い香りが強くただよってきた
そしてついに発熱

一ヶ月という時間をかけて
こうじ菌が少しずつ少しずつ増殖していく様子を
このたび初めて実感する

今まで米ぬか発酵肥料を作るときは
寒い時期には室内で行っており
戸外では暖かくなってからしか作ってこなかったので
早いときには元種を投入して半日後には発熱
その後も一気に温度はあがり
比較的短時間で米ぬかは変化していった

その時の米ぬかの質感と
今回ゆっくり発酵している米ぬかのそれとは明らかに違う
それは
こうじ菌が米ぬかの隅々まで丁寧に回っているからなのだろう

発酵肥料の本を読むときに
「上質の発酵肥料」という文字を見ては
一体なにがどう上質なのだろうと思っていたが
もしかするとこういう感じなのかな?と
まだ途中段階ながら感じているところだ

基本的に発酵肥料というのは
清酒や味噌などの発酵食品と同じ理屈で同様のつくり方をするが
その清酒や味噌は通常冬に造られる
それは
発酵段階のはじめを担うこうじ菌の働く適期が冬だからで
まずじっくりとこうじ菌がでんぷんをブドウ糖に変える糖化作用をすることで
良質な清酒や味噌になる準備段階が整うわけだ

この2年間
勝手気まま色んな季節に繰り返し発酵肥料を作ってきたわたしは
今回はじめて冬に戸外で作業を行うことで
発酵肥料つくりは冬〜春が適期とやっと実感したのだった
これはちゃんと本に書いてあることなのに
ずいぶん回り道したものだと思う

一方
せっかちなわたしは
今、早く種まきしたいとのはやる気持ちを抑えている
手元には春まきの草花や野菜の種があり
どうしても
早くまけば早く苗が育ち早く花が咲き収穫できるように思うのだが
現実はそうではない

ここ広島県の沿岸部は日本の中では温暖な地方であり
種袋の裏に書いてある種まき適期が暖地は3〜4月とかいてあると
3月になったらすぐにまけるような錯覚に陥る
しかし一方で
発芽適温は20度前後と書いてあれば
いくらここが温暖とはいえ
20度になるのは3月の下旬だ
さらに安定するのは4月上旬
3月下旬では年によっては雪が降ることもあるのだから
確実性を考えれば最も適しているのは4月になってからといえるだろう

種まき時を急いだために
まったく発芽しなかったという経験が
実はわたしには何度もある
ちゃんと肥料分のない新しい土にまき
新聞紙をかけて遮光してこまめに水やりをしていても
その時が適期適温でなければ発芽は難しい

一方
秋まきの場合は春まきとは反対に
温度がしっかり下がることが必要になってくる
以前はデルフィニウムやラークスパーを9月上旬からまいて
芽が出てこないと嘆いていたこともあるが
これらはしっかり涼しくなる10月の半ばまで待つのが確実と聞き
春同様に適期適温を知らなくてはならないと
切実に感じたのだった

こういった草花と同様
野菜栽培もまた時を知る必要がある

この辺では早いところでは3月の終わりには
トマトやキュウリといった夏野菜の苗が出回るようになり
苗の売り出しピークは4月上旬から下旬で
うちでもこれまで色んな時期の苗を購入して育ててみた

すると
4月の初めと終わりに購入した苗は
確かに初めのうちは生長に差があるが
そのうち後から購入した苗が追いついてきて
収穫時期は変わらなくなるのだ

更に
4月初めに種まきして育てたトマトの苗と
4月半ばに購入したトマトの苗の生長を比べてみても
初めは当然格段の違いがあるものの
種まきトマトの5月以降の生長は目を見張るものがあり
これも最終的には収穫時期にさほど差はなくなってしまう

2年前から野菜も種から育てるようになったのは
”種から育てた苗は強い”と聞いたからなのだが
考えてみれば市販の苗もすべて種から育てられているわけで
違いは種をまく時と環境にあるわけだ

早くから種をまいて苗を育てるには
どうしても温室栽培となり
過保護に育てられた苗は
過酷な自然の畑に連れてこられると苦労する

発酵肥料を作る時にも
寒い中加温しないでこうじ菌を自力で増殖させることで
むしろ純粋にこうじ菌だけが増えていき
強い発酵菌に育っていくのと同様に
植物の種もまた
自力で発芽する自然の条件下で育てることが
強い苗へと生長する一番の近道なのだろう

生き物が順調に育つ過程の基本というものは
微生物も植物も人間も同じなのかもしれない

こうして一年中色んな種をまいているが
今年ははじめてバラの種をまいてみた

晩秋に収穫したバラの実から種を取り出し
湿らせたキッチンペーパーに包んでビニールに入れ
冷蔵庫で一ヶ月保存して低温処理をする
そうしておいた種を1〜2月にまくのだと教えてもらって準備していたけれど
1月があんまり寒かったため躊躇しているうち
結局2月に持ち越し
そろそろまかなくてはとあけてみたら
なんとノバラの種から根が出ている!
こんなに冷たい冷蔵庫の中でも
種は季節がわかるのだろうか・・

自然の摂理の中で生きるものの姿にどきどきしながら
急いで種をそっと土に埋めた





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