花ごころ

有機栽培と化学肥料
                                                  



2003年はバラの花を楽しむことよりも
そのバラを育てる肥料を作ることに熱心な年だった
何とかバラに有効な配合肥料を自作したいと考え
材料に選ぶのはどれも油かすや骨粉などの有機質肥料
『無農薬有機栽培』
なにしろ、これこそが土を肥やし
丈夫な植物を育て
美しい花と美味しい作物を供給してくれる夢の栽培法と
信じてやまなかったのだから。。
ところが
「化学肥料はダメ、やっぱり有機肥料でなくちゃ」
それはまるで信仰のごとく
多くの人を惑わしている思い込みだと知ったのは
実はつい最近のこと

初めてバラ栽培に取り組んだ時
お手本とした日本バラ園の施肥計画が
堆肥&有機質肥料と化学肥料の折衷型であることに
わたしはちょっと不満だった
それまでガーデニングらしきものをやっていた時には
化学肥料は絶対に使わなかったし
「化学肥料は土をだめにする」
「化学肥料で育てた野菜は栄養価が低く美味しくない」
「化学肥料を使っていると作物の病害虫がつきやすい」など
あちこちで聞きかじりの中途半端な情報が
わたしをそう思い込ませていた

しかし
色々と本を読むうちに
化学肥料のみを使う栽培法の問題は
決して化学肥料そのものが悪いのではなく
それを使う人間の側が
それまで行っていた堆肥や有機物を使った土つくりを怠るようになり
速効性で安価、そして臭いもないきれいな化学肥料に依存し
たくさんの収穫物を得ることを重要視するようになった背景があることを知る
従来の土つくりを続けながら
有機肥料だけでは不足する栄養素を化学肥料で補うやり方をとっていれば
有機物の不足からしだいに地力が低下することもなかったし
そのために起こる病害虫を防除するために
化学農薬を多用することもなかったわけだ

だいたい化学肥料といっても
名前は化学だけれど原料は天然物であって毒ではない
例えば過リン酸石灰は
リン鉱石という天然鉱物に
天然の硫黄を燃やして製造した硫酸を反応させ
植物が吸収しやすい形にしているのだという
主成分はリン酸カルシウムと石こうで
これらはともに食品添加物にも認められているとのこと

こういうことを知ってからは
有機&化学肥料折衷栽培も納得がいくようになり
初めてホームセンターで過リン酸石灰を買ってみた
しかし
化学肥料はあくまでもピンポイントで使うだけ
やはり有機質肥料にはこだわりたい
なにしろ土中の微生物を増やすことで土を肥やし
元気な植物を育てようとしているのだから
化学肥料は最低限にした方が良いに違いない、、、
とまあ
化学肥料が微生物の生育を阻害しているかのような思いが消えるまでには
それからまだ少し時間が必要だった

昨年春からはじめた発酵肥料つくりは
さまざまな試行錯誤を重ね
いよいよ今年から実際にバラに使う実践編へと進む予定だが
つくり方は大体わかってきたものの
配合する原料となる肥料の種類がずっと決まらなかった

米ぬかをベースに
油かすや骨粉、鶏ふん、魚粉などなど
本に載っているこうした一般的な材料を組み合わせて計算してみるものの
市販の有機配合肥料のような高い栄養価が得られないのだ
特にバラを育てるにはたくさんのリン酸分が必要になるが
それを補う骨粉は高価なのであまりたくさんは入れられない
安価でかつ高い栄養価を求めて
自分で考えうるあらゆる組み合わせや割合を計算しても
到底市販品には勝てないジレンマ・・・
これは変だ
袋には「有機配合肥料」と書いてあっても
市販品はみんな化学肥料を混ぜてるんじゃないの?!

そんなことを考えながら
とりあえずこれと思う配合割合で作った場合の
バラ一株への年間施肥量を割り出したら
これがまたかなり多い
それを所有する全てのバラに施したら一体どれほどに??
これでは費用もかさむし
自作の発酵肥料は一度にたくさん作るのは混ぜる労力など考えると大変なのだ
そう思うと思わずくらくらする

結局有機肥料だけにこだわっていたら
思うようにバラ栽培はできないなあ・・・
ため息をつきながら
わたしの発酵肥料つくりの教科書である
薄上氏の著書をめくって
『発酵化成肥料のつくり方』というところを読んでみる
この本自体は今まで何度もめくってはいるが
化学肥料を混合する発酵肥料についての項は
ほとんどとばし読みだった

そこに重要なポイントを発見!!

微生物は、動物のように有機物を分解してエネルギーと栄養を吸収するだけでなく
植物と同じように無機栄養のアンモニアやリン酸、カリをもエサとして消化吸収して
体内に取り込み、アミノ酸などの有機栄養に合成することができる
また、不足しているアミノ酸の種類やビタミンも合成することができる
この力の最も強い微生物が酵母菌だ


単品の化学肥料である、”硫安”や”過リン酸石灰””塩化カリ”などは酸性だが
有機発酵肥料を作る際にこれらの酸性化成を加えると
酸性を好む性質の酵母菌がこれらをエサとして取り込み
アミノ酸、ビタミン、ミネラルを合成するというのだ

化学肥料は微生物の生育を阻害すると信じていたわたしの思いは
全くのデタラメだった。。。

ここでやっと前回書いた「臭わない発酵肥料をめざして」にある
過リン酸石灰が堆肥の腐熟を促進させるという効用について
自分でも納得のいく答えが得られた
それまでは過リン酸石灰だけが何か特別なのだろうかと考えていたが
実際は多彩な微生物の働きのおかげで
どんな安物化学肥料もたちまち立派な高度肥料に変身する
微生物ってほんとにえらい!!

人が飲む健康飲料も今は”アミノ酸入り”がブーム
一方、植物の肥料のコーナーにも”アミノ酸入り”がたくさん並んでいる
人にも植物にも吸収しやすく
なおかつ体内で重要な役割を果たすアミノ酸
そのアミノ酸が
発酵肥料を作る段階で微生物によって生産されるとは・・
しかもあの化学肥料から!

「化学肥料はダメ、やっぱり有機肥料でなくちゃ」
この思い込みはここできれいさっぱり消え去ったことは言うまでもない

昨秋に
米ぬかをこうじ菌〜乳酸菌&酵母菌で発酵させた米ぬか発酵肥料を作ったが
乾燥させてとっておいたものがあるので
今日から新しい米ぬかに混ぜて拡大発酵させている
発酵が進んできたら
ここへ数種類の化学肥料を入れてみるつもりだ
使う肥料の種類や配合率についてはただ今検討中

昨年は発酵に関する本もいろいろ読んだのだが
まだまだそれぞれの菌について十分把握しておらず
今回はとにかく酵母菌の性質に驚いている

微生物のなかでも味噌や酒をつくる酵母菌はアミノ酸などの合成能力が高く
ビール酵母にはすべての必須アミノ酸やビタミンが含まれている


実は先日からずっと
「弱った松の根元にビールをかけると元気になる」
といっていた祖母の言葉を思い出し
ビールに一体何の効果があるのだろうと考えていた
なるほど、土中にビール酵母が増えれば
それだけ松にとって有用なアミノ酸やビタミンやミネラルが増えて
結果的にそれらを吸収して元気になるということか〜

納得&感心
そして思わず、ビールって自分で作れるかな??
と考えてしまう自分が怖い(笑)
そう言いながら
もう頭の中では小さな缶ビールを1本買ってきて
ビール酵母を培養してみようと考えている(呆&笑)



注) 紫字の箇所は『発酵肥料で健康菜園/薄上秀男著』からの抜粋です




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